LP ZUKAN / WHEN TO USE
この図鑑は、
いつ必要になるのか。
「LPを作る場面」ではなく、「雰囲気を指定しなければならないのに、指定することばを持っていない場面」で必要になります
使う場面の想定と、その場で使うことば
TL;DR作る技術がボトルネックでなくなった瞬間に、「決めることばがない」ことが新しいボトルネックとして露出します。AIでLPが数十分で建つようになったいま、詰まる場所は「どう作るか」から「何を指定するか」へ移りました。この図鑑は、その移動先の詰まりを解く道具です。
01
詰まりが、移動した
この図鑑が要る理由は、道具の性能の話ではありません。ボトルネックの居場所が変わったからです。
これまで
- 作れる人が限られていた
- 詰まりは「どう作るか」
- 解決策は、技術を持つ人に頼むこと
いま
- AIが数十分でLPを建てる
- 詰まりは「何を指定するか」
- 解決策は、選べる見本を持つこと
だからこの詰まりは制作会社の中だけで起きるものではなくなりました。店主本人・受講生・商談の席にまで広がっています。次の5つは、すべて同じ詰まりの別の現れ方です。
02
必要になる、5つの場面
場面は違っても、起きている事故の構造は全部同じです。相手が雰囲気を選べるのに、言えない。そこで止まっています。
01
非デザイナーが、最初のプロンプトで固まる
店主・士業・講座運営者がAIに「エステサロンのLP作って」と打つと、動くけれど無難でAIっぽいページが出てきます。「もっとおしゃれに」と返しても改善しません。
原因はAIの能力不足ではありません。本人の中に、配色・書体・密度・構成の参照点がないことです。デザインの引き出しがゼロの人に「ことばで雰囲気を指定しろ」は無理があります。
図鑑があると「ことばで指定する」を「見て選ぶ → 指示文が出る」に変換できます。ここがこの図鑑のいちばんの想定場面です。
02
研修・講座で「LP制作」を教える
受講生に「AIでLPが作れます」と見せると盛り上がります。ところが演習で各自にやらせると、全員が同じ無難なページを量産して「で、実務でどう使うの?」となります。
図鑑があると「良い指示の出し方」を口頭で教える代わりに、選択式の教材として配れます。配布物としても、演習の台本としても使えます。
03
「おまかせで」と言われた案件の、修正地獄
イメージを聞いても「特にない、いい感じで」としか返ってきません。おまかせで作ると初稿提出後に「なんか違う」が始まり、修正ラリーで利益が溶けます。
実際にありそうな一部始終を読む(整体院の院長案件)
紹介で受けた整体院のLP。ヒアリングで「イメージありますか?」と聞くと院長は「うーん、特にないです。先生に任せます。いい感じでお願いします」。唯一の手がかりは「安っぽくはしたくない」の一言。
仕方なく、清潔感のある白基調・青アクセントで初稿を出す。すると返ってきたのが——
「なんか、冷たい感じがするんですよね」
「もうちょっと、こう、温かみっていうか」
「あと知り合いの接骨院のサイトがカッコよかったんで、ああいう感じも入れつつ」
ここから修正ラリーが始まる。「温かみ」を汲んでベージュに振ると「今度はぼやけた」。写真を大きくすると「情報が少なく見える」。3往復目あたりで気づく——院長の中に正解はある。ただ、それを言うことばを持っていないだけ。制作者は院長の頭の中を当てるゲームをやらされていて、1回外すたびに数時間溶ける。時給換算すると、この案件はもう赤字。
図鑑があると初回ヒアリングの最後の10分で「業種に関係なく、近いと思うものを3つ、絶対にイヤなものを2つ選んでください」。院長が選んだのは「地域密着の整体院」ではなくご褒美エステサロン寄りの作例で、却下したのは「結果重視パーソナルジム」。この時点で「ガチガチの治療訴求より、癒し・ご褒美路線で行きたい」という、院長自身も言語化していなかった方針が確定します。「冷たい」と言われるはずだった初稿が、最初から出ません。
ここが要点です。「なんか違う」は納品後に発生する事故ではなく、着工前に潰せる仕様漏れでした。
04
商談の席で、温度が上がりきらない
こちらが口で雰囲気を説明している間、相手は頷いてはいるものの、目が泳いでいます。ことばで説明された雰囲気は、聞き手の頭の中で全員別の絵になります。
実際にありそうな一部始終を読む(カフェオーナーとの初回商談)
新規オープンするカフェのオーナーと初回打ち合わせ。こちらが「余白を活かしたナチュラルな雰囲気で、写真を主役にして…」と口で説明している間、オーナーは頷いてはいるが、目が泳いでいる。オーナーの脳内では多分、昔見た別のサイトが再生されている。
「では企画書とラフを作って、来週また」——この1週間が商談の温度を殺す。持ち帰った瞬間に熱は冷め、相見積もりの他社と「金額」だけで比較される土俵に乗る。
図鑑があるとその場で開いて「例えばこの『ナチュラルカフェの余白』、近いですか? それとも『ベーカリーのクラフト感』みたいな手作り感?」。オーナーが「あ、こっちです、この感じ」と指を差した瞬間、認識が一発で揃います。
さらに一歩その作例の指示文をその場でAIに投げて、商談中に叩き台のページを画面に出します。「もちろん仮ですが、この方向で御社の写真とメニューを入れて仕上げていきます」。他社は紙の企画書、こちらは動くページ。「来週提案します」の会社と「もう目の前で建ち始めている」会社では、受注率も、値引き圧力のかかり方も変わります。
ここでの図鑑の役割は制作ツールではなく、営業ツールです。「雰囲気の合意」と「実現可能性の証明」を、商談の30分の中で終わらせる装置になります。
05
リニューアルで、不満の正体が出てこない
「サイトをリニューアルしたい」。理由を聞くと「古い感じがするので」。どこが古いのかを聞くと「全体的に…なんとなく」。担当者も社長も、不満はあるけれど指させません。
実際にありそうな一部始終を読む(健康食品の通販会社)
このまま受けると、ゴールが「なんとなく新しい感じ」という案件になり、何を出してもゴール未達のリスクを負う。最悪なのは、リニューアル後に社長の一言「前のほうが良かったんじゃないか」が出るパターン。
図鑑があるとまず現状のサイトを図鑑の隣に置いて「今のサイトに一番近い作例はどれですか?」。担当者が選んだのは情報がぎっしり詰まった直販型の作例。次に「なりたいのはどれですか?」——選ばれたのは信頼設計の定期通販型。この2枚を並べた瞬間、「なんとなく古い」の正体が差分として言語化されます。密度を5段階の5から3へ、原色の値引きバッジを廃止、根拠のセクションを前へ。つまりこのリニューアルは「デザインを新しく」ではなく「押し売り型から信頼型への転換」だったと、クライアント自身の口から出てきます。
副産物この差分は社内稟議にも効きます。担当者が社長を説得するとき「今がA、目指すのがB、変える点はこの3つ」と2枚の絵で説明できるので、決裁が通りやすく、後出しのちゃぶ台返しも起きにくくなります。ビフォーとアフターの両方に合意させておくことが、「前のほうが良かった」への保険になります。
03
入り口は2つ、着地はひとつ
使い方は「自分ひとりで先に選ぶ」と「相手と一緒に見ながら選ぶ」の2つがあります。並列ではなく、前者が外れたときに後者へ切り替わる連続として捉えると迷いません。
ENTRY 01
自分で先に選んでおく
受注がほぼ決まっている。頭には浮かんでいるけれど、ことばにできない——そんなときに、先に見本から選んでモックを組んでおきます。
当たれば ↓
外れたら ↓
ENTRY 02
一緒に見ながら選ぶ
「じゃあ、どれが近いですか?」
「逆に、これは違うというのはどれですか?」
↓
GOAL
ことばでなく現物で、
イメージが揃った状態
この道具のいちばんの強み外しても損をしないことです。普通の制作なら、事前に組んだモックが外れたら手戻りで時間が消えます。この道具だと、外れたモックがそのまま「これは違う」という判定材料になります。相手は「違う」と言うだけで前に進めるので、ゼロからことばにする必要がありません。外れが手戻りではなく、情報に変わります。
04
その場で使う、3つの質問
画面を一緒に見ながら聞くときの順番です。好みを直接聞かないのがコツになります。
STEP 01
01
まず、捨てさせる
「この中でこれは違うというのはどれですか?」
好きなものより、嫌いなもののほうが人は即答できます。選ばせる前に、これをやります。
STEP 02
02
好みでなく、軸で聞く
「今の色、お店の雰囲気に対してかたい/やわらかいどちらに寄っていますか?」
「この文字、お客様はきちんとしている/堅いどちらに感じそうですか?」
「この動き、落ち着きますか/急かされる感じですか?」
STEP 03
03
主語を変えて、確定させる
「この画面にお店の名前と写真が入ったら、お客様に見せたいと思えますか?」
決裁者が複数いて意見が割れたときも、主語を「お二人の好み」から「お客様」に移すと、対立が判断に変わります。
相手がことばに詰まった瞬間に、画面を1段変えるのがコツです。「うーん…」と黙ったら、「じゃあ少し落ち着かせてみますね」と言いながら配色を動かします。差分を見せると、必ず反応が返ってきます。聞く順番は色 → 文字 → 動きが安全です。色がいちばん反応が出やすく、動きはいちばん意見が出にくいためです。
05
ひとことで言うと
結論クライアントは雰囲気を「選ぶこと」はできますが、「言うこと」はできません。それなのに従来の制作フローは、言わせようとするヒアリングから始まっていました。
この図鑑は、ヒアリングの最初の入力を「発話」から「指差し」へ置き換えます。必要になる場面とは、要するに「クライアントに何かを言わせようとして失敗するすべての場面」です。